Archiware P5 と NAS


NASとは?

NAS (network attached storage : ネットワーク アタッチト ストレージ)という用語は、各メーカーの考え方により非常に幅広いNAS製品全般を差す用語です。NASのなかには、性能や容量、信頼性の面で業務でのバックアップ用途に適さないエントリークラスの製品も存在します。もちろん、バックアップ用途に対応した製品も存在します。

■ NASへの接続

NASがその名の通りネットワークを経由して接続されていることは明白ですが、これらのNASがどのようにホストに接続されているかが、NASの最も重要な要素です。

バックアップ用途に限って言えば、理想的な接続方式はiSCSIです。iSCSIはイーサネット経由でSCSIプロトコルを通信し、ホストが直接ローカルディスク同様にNASを制御することができます。ただし、すべてのNAS機器で対応しているプロトコルではなく、またiSCSIイニシエーターを必要とすることから、あまり身近な存在ではありません。また、1つのホストだけの排他アクセスという制約もあります。

iSCSIにかわるNASへの接続手段としては、AFP、SMB、CIFSやNFSといったネットワークファイルシステムプロトコルの利用があります。

次に考慮すべき点としては、ネットワーク接続網です。NASが通常使用のネットワーク網とネットワークを共用している場合では、バックアップがネットワークへの負荷となってしまい、応答速度の低下や転送速度の低下をひきおこします。このため、LANセグメントを専用に分離したり、極端な例ではバックアップホストとNASを直接結線するなどの対策が有効である場合があります。

■ ネットワーク共有プロトコルの使用

 NFS, SMBやその他のネットワークファイルシステムを使う場合にはいくつかの制約が存在します。
これらのネットワーク共有プロトコルを経由した場合、ファイルのプロパティ(あるいは属性)が欠落して見えたり、失われたりすることがあります。原因はアクセスするOSの種類や、ネットワーク共有プロトコルや、ファイルの保存先となっているNAS上に構成されたファイルシステムの種類などです。不安がある場合は、使用している環境をチェックすることをおすすめします。

P5は、ごく一般的な方式でファイルシステムへのアクセスを行います。これはネットワーク共有に対しても同様です。さらに、ネットワーク共有上のファイルに対して、P5側からは各ファイルが属性が欠落して見えているのか、属性情報が存在しないのか、ファイルシステムの制約により読み取れないのかを判別することはできません。

たとえば、SMB/CIFS共有がもともとWindowsの世界でWindows向けに開発され発展してきた技術であり、他のOS上で利用されているファイル権限を完全に正しく反映させることができないなどの仕様上の制約が存在しています。


■ プラットフォーム混在環境下でのNASの利用

一般的なNASを使用すれば、異なるOSが混在した環境でもファイルの共有が簡単にできるように思えるかもしれません。しかし実際には相当の苦労を強いられることになります。たとえば、それぞれのOSは独自の方式でファイルシステム上のファイルを取り扱い、他のOSとの互換性は考慮されていません。

ファイル名の読み取りに関していえば、下記の制約を持つWindowsは最も難しいOSと言えます。

  - 0x01 から 0x1Fまでの制御文字をファイル名としての使用が禁止されている
  - “ * ? < > / \ | がファイル名としての使用が禁止されている
  - ピリオド(.)または空白( )で終わるファイル名が禁止されている

これは、Windowsホストが取り扱うことができないファイルでも、MacやLinuxホストから問題なく読み書きが行えるファイルが存在することを意味します。特に空白文字(半角スペース)で終わるファイルはMacでは珍しくありませんが、Windowsからは読み取ることができません。

対して、Apple OS Xは、いわば「ステレオ」でファイルやフォルダを見ています。OS Xは拡張ファイル属性やその他の情報を、データフォークとリソースフォークの別個のファイルとして持たせることで扱います。何らかの理由でリソースフォークが読み取れない場合でも、自動的にApple-Doubleフォーマットと呼ばれる方式に切り替わり、通常のファイルと、リソースフォークとして利用される._で始まるファイルの2つのファイルを書き込みます。他のOSからは、これらのファイルは別々の独立したファイルとして見え、どちらかを消去した場合には、OS Xでのデータフォークとリソースフォークの関連性を失うことになります。

OS混在環境にまつわる、よく知られた問題としては、7ビットASCIIコードに含まれないウムラウトやアクセントシンボルなどを併用する非英語言語の文字の扱いがあります。

これらの文字はOSによって取り扱いが異なります。たとえば、WindowsではUTF-16キャラクターセットを使用し、2バイトで記録されます。UNIXおよびOS XはかわりにUTF-8文字セットを使用して3文字で記録します。Macはさらに派生のcombined UTF-8を使用します。残念ながらファイル名は正しい文字コードセットが指定されていない限り、正しく読み取ることはできません。

一方で、P5は異なるプラットフォームごとに動的に正しいファイルネームを変換して読み取ろうとしますので、現在のところ、より洗練されていると言えます。WindowsではUTF-16、OS XおよびLinuxではUTF-8であることを前提に処理を行います。
NASに関してはMacから書き込まれたファイルをWindowsから読み取る場合やその逆の場合に変換ミスが発生することがあります。この問題の解決に、Archiwareではプラットフォーム間をまたいでのファイル名の読み取り対策のソフトウェアをファイルサーバーにインストールした上で、OS混在で同じパーティションを共有しないことを推奨しています。(WindowsではExtreme-Z-IPなど)

(訳註 : 上記は一般的なNASについての説明です。シナジーではOS混在環境可で上記の問題を解決するソリューションを提案しています。お問い合わせください)

■ Backup2Go のファイル収容先にはNASは不向き

NASを Archiware P5 Backup2Goのファイル置き場として利用するのは避けるべきです。

ネットワークファイルシステムは一般的に遅延が高い傾向になり、OSを問わず、ファイルの属性のみを参照する場合でもデータへのアクセスを行う場合でもファイルアクセスはネットワーク越しに行われ、応答を待つ必要があります。

Backup2Goはリンクを集中的に利用し、きわめて頻繁にディレクトリをスキャンします。これらの動作には、内蔵ハードディスクやSSD、またはDAS(ダイレクトアタッチトストレージ)などの低レイテンシなボリュームが求められます。

■ NASボリュームへのバックアップ

NASボリュームへのバックアップは比較的大型のコンテナファイルが書き込まれるので良好に動作します。レイテンシは問題にはなりませんが、ファイルシステムが対応する最大ファイルサイズに注意する必要があります。SMBボリュームでは2GBや4GBを最大ファイルサイズとなっている場合があり、その場合にはバックアップの設定変更でコンテナファイルをデフォルトの大きなファイルサイズから小さいものに指定しなおす必要があります。


■ Windows上のP5からNASへのアクセス

Windowsでは、ネットワークドライブはシステム全体ではなく、ユーザーごとに割り当てられます。そのため、P5はサービスとしてインストールされ、さらにローカルシステムユーザー権限上で動作するため、ユーザーによってマウントされたネットワーク共有は、システムに他のユーザー全体にわたって参照できる状態にする必要があります。

このような場合は下記のナレッジベース記事をご参照ください。

How to back up a network drive on Windows(英文)
http://www.archiware.com/support/index.php?/Knowledgebase/Article/View/182/0/how-to-back-up-a-network-drive-on-windows


■ Linux好き向けのNAS

一部にはPCのハードウェアアーキテクチャを利用してLinux上で動作するNASも存在します。このような場合でも、NAS自体でP5を動作させ、Webブラウザ経由または別のP5クライアントから操作することができます。

Archiwareがこれらの運用形態での動作保証をすることはありませんが、実際に上手く運用している例が存在している事は認識しています。ご使用中のNASで実現可能かどうかについては次の項目をご確認ください。

- ハードウェアがx86またはx64互換であり、32ビット対応であること
- Linuxの場合、カーネルが2.6.4移行であること
- /lib/libc.so.6 を実行し、“Native POSIX Threads Library …”と応答がある事

P5マニュアルの3章6.7もあわせてご参照ください。