■写真のファイルベースワークフロー
今世紀に入りデジタルフォトグラフィーの普及で、写真はデジタルデータで扱われるようになり、飛躍的に便利になりました。デジタルデータゆえにハードディスクやCD、 DVD、テープと記録媒体を選びませんが、アクセススピードの高さと容量の大きさでハードディスクで扱われるのが主流になっています。
保存媒体としてのハードディスクの利用は、便利である反面、ハードディスクが思った以上に脆い記録手段であることに留意しておく必要があります。人為ミスのみならず、ハードディスクのファイルシステム損傷、ウイルス、その他の物理的な故障によるデータ消失の危険に常に晒されています。さらに年々大容量化する記録媒体は大量のデジタルデータを記録することができ、データ消失のリスクを増大させています。このような状況において、系統的なデータ保全策を講じること無く写真データの管理を考えることはできません。
●ステップ1、バックアップ
デジタル写真のデータを消失から守る第一歩は、データの複製を別のストレージにコピーしてバックアップすることです。別のストレージに複製するだけでハードウェア故障によるリスクを大幅に低減できます。但しバックアップ元のドライブとバックアップ先のドライブが同じコンピュータに常時接続されている限り、前述のデジタルデータにつきまとうリスク要因を排除することはできません。
特にウイルスやマルウェアに1台のディスクが感染してしまうと、他のディスクにも影響が及んでいる可能性が高くなります。簡単な対策として、一定の間隔でバックアップのときだけバックアップ用のディスクを接続して新しいデータをバックアップする方法が考えられます。
●増分バックアップ
バックアップを自動化することで、リスクを大幅に低減させることができます。バックアップ用のドライブを毎日夕方だけに接続して、自動的に前回バックアップされてから1日の間に追加・変更されたデータのみをバックアップするというものです。これはインクリメンタルバックアップ(増分バックアップ)と呼ばれ、必要なファイルのみをバックアップ先にコピーし、バックアップの時間を短縮します。
大きな画像や、高解像度のRAWデータなどの非常に大きなデータを扱う際には、コピーにかかる転送時間が問題となります。ファイルの重要性に応じて、2つの異なるデバイスや記録媒体に記録することで、プロフェッショナルレベルのデータセキュリティを得ることができます。
『P5 Backup』では、変更されたファイルのみを自動的にバックアップすることで、データを消失したとしても簡単にウェブブラウザから消失したデータを検索・閲覧してリストアすることができます。
バックアッププラン
●バックアップのプラン
● ステップ2、オフサイトにデータを疎開・退避
プロフェッショナルレベルのセキュリティを確保するには、水害、火災、盗難、落雷といった災害などの外的要因によるデータ消失リスクに備えなければなりません。「タマゴを同じカゴに盛るな」のたとえ通り、オリジナルのデータとバックアップデータを同じ部屋に保管していればこうした災害からデータが消失してしまうリスクが高まります。
そのため、オリジナルとバックアップのうち、いずれか一方を異なる場所に物理的に保管することが重要です。オフサイトの疎開先としてバックアップデータをスタジオ以外の自宅やその他の場所にするかは自由ですが、日常的な定期ルーチンとして他の安全な場所に保管するルールを取り決めたうえでの実施が重要です。
●ステップ3、アーカイブ
フィルムとスライドを扱ってきた銀塩カメラ時代からのフォトグラファーにとっては、写真家自身の作品のアーカイビングの経験があることでしょう。フィルムとスライドでは写真を作業台からいくつかの形態のアーカイブにまとめることが必要でした。作業台を片付けて、将来に同じ写真を再利用することに備えて保管しました。
デジタルデータにとっても同じことです。作業台の場所にかわって、いっぱいになったローカルハードディスクを、次の作業に備えて空きをつくることになります。
データのアーカイビングは、ワークステーション上のデータを他のストレージ機器または記録媒体に移動・移行することです。アーカイブ済みのデータは消去して、次の作業のための空き容量を確保します。バックアップのときに確立したセキュリティ基準をアーカイブデータでも維持するには、アーカイブの複製を取っておく必要があります。オリジナルデータが消去されている以上、アーカイブのみにデータが保存されている状態になりますのでさらにアーカイブの複製を取る必要があります。
『プレスストア・アーカイブ』では、このアーカイブデータの複製が、ストレージプールのクローンをつくることで実現しています。アーカイブの複製のうち1 つをオフサイトに疎開保存させておくことで、はじめてプロフェッショナルレベルのセキュリティが確保されます。
Apertureなどの現像ソフトウェアなどにはこうしたアーカイビング機能は用意されていません。(※簡単なバックアップ機能は付属・後述)
クローン機能
PresSTORE BackupとPresSTORE Archiveの両方を併用することで、最大のセキュリティレベルと、アーカイブされたフォトグラフデータへの効率的なアクセスが実現します。
アーカイブには、サムネイルなどの閲覧機能や検索機能が必要です。ファイルネーム、日付、メタデータ情報を利用すれば、リトリーブするファイルの特定がしやすくなります。ブラウザを使ったアクセスで便利に閲覧することもできれば、ブラウザに表示されるカタログデータをクライアントにウェブ越しに公開することもできます。
バックアップソリューション
Apple ApertureやAdobe Lightroomなどの現像ソフトウェアは、ごく基本的なバックアップ機能を備えていますが、いくつかの制約もあります。Apertureのバックアップ機能は非常に簡単で、メインツールとして利用していれば、基礎的なバックアップ機能でなんとか乗り切れます。
ただし、いくつかの検討すべき事項があります。Apertureからファイルを消去すると、バックアップからもデータが消去されてしまいます。さらに、参照しているマスタデータの場合はバックアップとして一緒に保存されません。これとは対照的に『プレスストア・バックアップ』はインクリメンタルバックアップ(増分バックアップ)でファイルをバックアップに追加していきます。すなわち、すべてのファイルがバックアップされ、消去されたファイルでもリストアして再利用できます。さらに、Apertureではマニュアル操作でしかバックアップを開始できませんが、『プレスストア・バックアップ』は設定した間隔でスケジュールバックアップを自動実行し、意識してバックアップのための操作をしなくても実行し、バックアップの取り忘れを防ぎます。
●フォトグラファーのための長期ワークフローへの考察
・すべてをバックアップ!
フォトグラファーにとって、デジタルフォトデータは最も大切な資産そのものです。写真のデータ以外にも、データが失われてはじめて写真以外のデータ、OS やアプリケーションなども大切なデータだということは、システムが故障した経験のあるフォトグラファーであればだれもが身をもって体験したことがあると思います。特に各種設定情報や、補正や現像に頻繁に使用しているプロファイルデータなどはフォトグラファーにとって大切な資産です。ソフトウェアの日常的な使用を通じて導き出された、最も使いやすい設定値やフィルタ、プラグインスクリプト、ブラシなどです。万一保存せずにシステムがクラッシュした場合は、こうしたデータを記憶をもとに再現せねばなりませんが、膨大な時間がかかります。
プロフェッショナルバックアップソリューションの『プレスストア』は、写真データ以外のほかのデータも保存し、このような局面も切り抜けられます。データの追加・変更、修正、削除などのあらゆる変化を監視し、バックアップが行われ、税務会計関連のスプレッドシートや経費精算書、オフィス文書、アドレス帳などといったビジネス関連のファイルも保存します。今日、ビジネスはファイルで成り立っているとも言えます。それも無数のファイルの集合です。万一に備えてこれらのファイルの保全を図ることが、ビジネスの継続性に備えることになります。
●アーカイブされたデータへのアクセス
写真家の多くが複数のツールを使い分けて写真のカタロギングや編集作業をします。複数のツールで相互にアクセスできなければなりません。ファイルベース、ファイル指向のソリューションはアクセス性を考慮した際に最も優れています。
すべての操作をウェブブラウザを通じて行う『プレスストア』は、ウェブブラウザからすべての設定、バックアップの実行、アーカイブ、監視、アーカイブされたデータの検索・サーチ、サムネイル閲覧からリストアまでが一貫したユーザーインターフェイスで行えます。ウェブブラウザベースなので、ネットワーク上やインターネット経由でも操作がおこなえます。アーカイブに便利なドロップフォルダの作成も可能です。ファイルネームや日付、拡張子やその他のフィルタリングで必要なファイルだけを選択することもでき、ワークフローに応じたバックアップに対応します。
■適切なストレージメディアの選択
高速、大容量で低価格なハードディスクはごく普遍的な存在になりました。さらにCD-RやDVDなどの光学メディアも幅広く利用されています。しかし、これらのストレージ媒体は長期保存の観点や容量で優劣があります。ハードディスクに比べると光学メディアは最新のブルーレイでも容量が少なく、1テラバイトのアーカイブを収録しようとすると大量のメディアを必要とします。また、保存性も問題で、光学メディアに記録したメディアは1年後にはかなりの割合で読み取り不能になっている場合があります。たとえ高品質な光学メディアを選んで保存性の問題をクリアしたとしても、アクセススピードの遅さや容量は依然として問題になります。
これに比べればハードディスクはより有利な記録媒体になるかもしれませんが、データを記録した後に取り外して、防湿された適温の場所に保管したとしても、次に起動しようとした時に起動しない場合があります。製造メーカーの異なるハードディスクを2つ用意して同じデータを書きこむことでこのリスクは低減できます。通常、ハードディスクに期待される寿命は2-5年程度だと言われています。
効率と精度、そして長期保存性の面で非常に成熟した技術があります。それはテープ、すなわちLTOです。
テープにあらかじめ書きこまれたサーボトラックや、データロスを防ぐチェックサムなどさまざまな機構で30年までの保存耐性を持ち、プロフェッショナルアーカイブに適したメディアと言えます。コンパクトなカートリッジに1.5テラバイトのデータを収録でき、オフサイト保管を簡便にしています。読み書きスピードは最大140MB/sと、最新のローカルハードディスクと同程度の高速アクセスを確保しています。ドライブを購入する際のイニシャルコストの高さが唯一のネックになりますが、これは総合的に考えなければなりません。
一度テープアーカイブシステムを導入すれば、とめどなく増え続けるハードディスクの管理や、インフラ上の問題が解消できます。1台のワークステーションに接続できるハードディスクの数には限りがありますし、電源や消費電力の問題も発生します。長期にわたってテープアーカイブを利用することで、テープドライブへの投資はコスト面においても、利便性でも容易に回収ができます。