なぜ撮影データをコンピューターに逃がす作業を「オフロード」と呼ぶのか?

Pomfort製品では、撮影素材メディアからHDDなどのデータストレージへデータをコピーすることを指して「オフロード」(offload)と呼んでいますが、馴染めない、どうしてそう呼ぶのかという問い合わせを受けます。これは、フィルム映画製作用語で、撮影済みのフィルムをシネマカメラのマガジンから取り出してフィルム缶に収容する作業を指す「offload」から来ています。

「撮影データをコンピューターに逃がす作業は、オフロードと呼んだ方がフィルム映画の用語と共通するから我々にはしっくりくる」

デジタルシネマの普及が始まった頃、既に映画製作に携わっていたクルーたちは「オフロード」の用語をそのままデジタルシネマのデータコピー作業にあてはめて使用するようになっていました。

IT分野にも同じ綴りのオフロードという用語がありますので、混乱が生まれやすく、更には日本語でカタカナ表記するとどうしても、四輪駆動車やブロックパターンのタイヤを履いたオフロードバイクが活躍する悪路や未舗装路を想起してしまうかもしれません。もちろん、オフロードのロードとはroad(道路)ではなく、[載せる、装着する、負荷]を意味するloadのほうです。IT用語の「オフロード」とは、ソフトウェア処理に伴って発生するCPUへの負荷(load)を軽減する目的で、たとえば特定の処理のための専用ハードウェアプロセッサに処理をさせる場合などに用いられる技術です。確かにSilverstackでのオフロード作業も収録メディアの容量を解放し、負荷低減にはなりますが、「負荷」ではちょっと違和感が生じます。

職務の役割と序列がはっきりしている映画撮影クルーには、(国や地域、映画会社ごとで異なるようですが)フィルムをフィルム缶からマガジンに装填(ローディング)したり、撮影後のフィルムを現像に回すためフィルム缶に戻し(オフローディング)、同時にフィルムの管理を担当する「フィルムローダー」という役割があります。

地域や会社ごとに異なりますが、撮影監督(DoP)、撮影技師(CO)に続くアシスタントとして、ファーストアシスタント(1AC)、セカンドアシスタント(2AC)のポジションが存在し、ハリウッドではフォーカスの責任者として主にピント送りを担当するファーストアシスタント、さらに続くセカンドアシスタントはカチンコを扱うほか、フィルムローダーから受け取ったマガジンをカメラに装着します。製作規模によって専任のフィルムローダーがいない場合はセカンドアシスタントがフィルムローダーを兼務するようです。

デジタルシネマ時代を迎えて、より重要性を増す撮影データの管理の仕事は、DITやデータマネージャーへとより専門性を求められる職種へと発展しています。

映画機材メーカー大手の技術者によって設立されたPomfort。Silverstackの原型もフィルム映画製作の中間工程をデジタルで行うためのDIツールとして出発しているという経緯もあり、フィルム用語としての「オフロード」を採用しているようです。